【読書】「悪魔の手毬唄」亀の湯女将、青池リカについて考える ※ネタバレあり
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※ 思いっきりネタバレなので、未読の方はご注意ください。
こんにちは、ばうぞーです。
先日、横溝正史の「悪魔の手毬唄」を再読しまして、やっぱりとっても面白い小説だなと思いました!
面白さは皆さん既にご存知だと思いますが、せっかくなので登場人物について感じたことを書いてみたいと思います。
リカさん、どうしてこんなことに・・・
今回は「亀の湯」の女将である、青池リカさんについて振り返ってみたいと思います。
彼女が置かれた状況を考えるたびに、「どうしてこんなことに・・・」と思わずにはいられません。
夫はイケメンのプレイボーイ。
他に愛人がいることは気づいてはいたが、何も言わず。
しかしある時、どうやら夫は自分の故郷の村に妻である自分と子供を捨てて、当の本人は愛人と満州で楽しく暮らそうと計画していることを知ってしまいます。
こっちにはまだ幼い息子に加えてお腹の中に子供がいるというのに・・・
怒り、悲しみ、惨めさなど様々な気持が入り交じり、夫を殺してしまいます。
しかも、この夫、愛人は1人ではなく3人いました!
加えて3人全員故郷の村の娘という・・・なぜそんな狭い範囲で・・・絶対ばれるだろうに。
挙句の果ては全員と同時進行で会っていた上に、リカさんも合わせて4人とも同じ時期に妊娠してしまうという・・・おいおい。
リカさんが夫を殺したときに、このことを知っていたかどうかはわかりませんが、もし知っていたらさらに言葉にならないほどの怒りがあったことでしょう。
それにしても、この夫・・・
何と言っていいのやら・・・
20年後の悲劇
そして時は流れ、20年が過ぎます。
夫のことも、自分が犯した罪のことも忘れることはなかったでしょうが、精神的には大分落ち着いていた時期だと思います。
しかし、ここで事件発生。
村の二大勢力であるそれぞれの家からリカさんの息子を婿に欲しいという縁談の話が出てきたのです。
リカさんの息子は夫とは違い、とてもまっすぐな性格の少年です。
同年代の女の子からはもちろん、男の子からも慕われています。
リカさんの家は村の中ではあまり裕福な方ではないので、普通に考えればとてもありがたい話ではあるのですが、実際はそうではありませんでした。
上記にリカさんの夫は愛人が3人いたと書きましたが、うち二人が、縁談を持ち込んできた二大勢力の家の娘だったのです。
つまり、リカさんの息子と二つの家の娘は異母兄妹ということになります。
血のつながった兄妹との結婚なんて許されるはずもありません。
でも、結婚に反対する理由を言えば自分が捕まることになる。
そんなことになれば、子供たちはどうなってしまうのか?
新たな悩みにリカさんは苦しめられることになります。
その上、悲しいことにタイミングよく悩みの種は増えていきます。
村を離れていたもう一人の愛人とその娘が、近く村に帰ってくるとの噂が!
この娘は、芸能人になっており最近は飛ぶ鳥を落とす勢いの人気となっているのです。
この2つの出来事が同時期に発生したことにより、リカさんは追い込まれていきます。
なぜ追い込まれていくのか?
それは、リカさんの娘は夫を殺してしまったショックからか、顔に大きなあざを持って生まれてきてしまっていたからです。
彼女はそれが原因でほぼ人前に姿を見せません。
一方、3人の愛人の娘は皆美人で幸せそうに暮らしている。
愛人の娘は幸せなのに、なぜ自分の娘だけ・・・
20年の間に少しずつ積もっていったことが、一気にあふれ出て抑えられなくなってしまったのでしょうか。リカさんは破滅の道を選ぶことになります。
他に道はあったと思うのですが、その時のリカさんには「排除」以外の道が見えなかったのでしょう・・・
いつから変装の練習を?
リカさんは、村に伝わる手毬唄に見立てて夫の愛人の娘たちを殺していきます。
ここで登場する謎の老婆「おりん」。
この方は、村に住む自称世捨て人のお庄屋さんの5番目の奥さんです。
(ちなみに奥さんは全部で8人。最近別れたばかり。多すぎ)
お庄屋さんとよりを戻すために、村に行く途中に金田一耕助とすれ違います。
ところが、このおばあさんはリカさんの変装で、本人は数か月前に亡くなっていたのです。
ところで、リカさんはいつから変装の練習をしていたんでしょうか?
弓のように曲がった腰と言い、口調と言い、それなりの練習は必要だと思います。
でも、決行を決めた時点ではないと思うんですよね。
この変装は金田一耕助を欺くためのものだと考えると、金田一耕助が村に来てから事件が起こるまでの2週間で練習をしたんでしょうか?
金田一耕助がいなかった場合は、お庄屋さんを最初に行方不明状態にして、そちらに疑いの目が向かうようにしているので、おばあさんを登場させる必要はないと思うんですよねー。
NHKの「深読み読書会」で言っていたと思うのですが、最初に金田一耕助とすれ違ったのは挑戦というか、賭けをしたのではないか。
もし、そこで変装がばれれば計画は中止。しかし、ばれなければ自分の計画は完成できる、と。
結局ばれなかったわけですが、この考えでも変装することを計画に入れたのはぎりぎりだったのではないでしょうか?
お庄屋さんの方は、まぁ別の方法もあったことでしょう。
2週間、ないしは1週間でかなりクオリティの高い変装が完成します。
本当にすごいですよね。
最初の被害者である泰子ちゃんとは数十分一緒に歩いたのに、ばれなかったわけで。
というか、部屋で毎日練習していたんでしょうか?
鏡の前で衣装を合わせて、歩き方やしゃべり方の練習をしていたかと思うと、ちょっと泣けます・・・
おわりに
今回は、「悪魔の手毬唄」の最重要人物である青池リカさんについて長々と書いてみました。まさか一人でこんな長さになるとは・・・
書けば書くほど、「あぁ、リカさん、もっと別の道があっただろうに」「なんでそんな男と結婚しちゃったんだよー!」と何度も思ってしまいました。
逃げ場がなくなかったからと言って人を殺していい理由には全くなりませんが、なんだかなぁという気持ちになって、また読みたくなります。
またいつか読むことでしょう!
そして何度でも楽しめることでしょう!
次回は、別の登場人物について書きたいと思います。
それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました!